応用表面工学 第3回「ガス吸着」

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Summary

今回の講義では、固体表面上における分子の気体の吸着現象について深く掘り下げます。吸着と吸収の違い、そして化学吸着と物理吸着という二つの主要な吸着メカニズムについて詳しく解説し、それぞれの特徴と応用例を挙げます。特に Langmuir モデルと BET モデルを用いて吸着等温式を導出し、物理吸着と化学吸着の産業における重要性を強調します。また、吸着速度の計算を通じて超高真空技術の必要性についても考察します。

Highlights

序論:吸着とは
00:00:03

講義は固体表面上における分子の気体の吸着現象について説明することから始まります。吸着(adsorption)は、ある成分が界面で他の成分の外部からの影響、特に気体分子の影響によって、その内部とは異なる状態を示す現象です。これに対し、吸収(absorption)は分子が内部に入り込む現象を指します。吸着する分子は吸着質(adsorbate)、吸着される側は吸着媒体(adsorbent)と呼ばれ、吸着は系全体のエネルギーが小さくなる方向に進むため発生します。

吸着のメカニズム:物理吸着と化学吸着
00:05:11

吸着メカニズムには大きく分けて二つの種類があります。一つは物理吸着(physical adsorptionまたはphysisorption)で、吸着質と吸着媒体間の相互作用がファンデルワールス力によるものです。もう一つは化学吸着(chemical adsorptionまたはchemisorption)で、これは化学結合による相互作用です。これら二つの吸着は性質が大きく異なります。

物理吸着と化学吸着の特徴と違い
00:08:56

物理吸着はファンデルワールス力によって吸着し、吸着熱は蒸発熱程度で可逆的であり、選択性はありません。吸着速度は速く、活性化エネルギーは必要ありません。一方、化学吸着は化学結合力によって吸着し、吸着熱は反応熱程度で不可逆的であり、強い選択性を持ちます。吸着速度はある程度の時間を要し、活性化エネルギーが必要です。特に化学吸着では金属表面で分子が解離する「解離吸着(dissociative adsorption)」が起こる場合があり、これは触媒反応において非常に重要です。これらはデバイス作成技術である物理蒸着(PVD)や化学蒸着(CVD)、そして原子層堆積(ALD)の基礎技術となっています。

吸着等温式:Langmuir モデル
00:20:31

吸着現象を理解するためには、ある条件下でどれくらい吸着できるか(最大吸着量)、現在どの程度吸着しているか(現在の吸着量)、そしてどれだけ強く吸着しているかを知る必要があります。これを定量的に解析するためのモデルとして、Langmuir(ラングミュア)が初めて吸着等温式を提案しました。これは一定温度下での圧力と平衡吸着量の関係を示します。Langmuir モデルでは、固体表面上に吸着サイトが存在し、各サイトには一つの分子しか吸着できず、平衡状態では吸着速度と脱離速度が等しいという単分子層吸着を仮定しています。この仮定に基づき、被覆率(θ)と圧力(P)の関係式が導出されます。

多分子層吸着:BET モデル
00:46:00

Langmuir モデルは単分子層吸着を仮定していますが、多くの実験系では、圧力が上昇すると吸着量がさらに増加する多分子層吸着の現象が観察されます。この現象を説明するために、Brunauer, Emmett, Teller の3人が提案したのがBET吸着等温式(BETモデル)です。BETモデルはLangmuir モデルを多分子層吸着に拡張したもので、より広範な物理吸着系に適用できます。BETモデルを用いることで、窒素吸着などから実際の表面積(比表面積)を求めることができ、触媒や活性炭のような多孔質物質の特性評価に役立ちます。例えば、活性炭は1gあたり3000平方メートルもの比表面積を持つことが知られています。

吸着速度と真空技術の必要性
00:57:03

化学吸着の研究では、吸着質と吸着媒体の組み合わせによってモデルが大きく異なるため、個別の解析と表面分析が非常に重要となります。物理吸着速度は非常に速く、約1秒でナノ秒オーダーで吸着が完了します。この速さのため、吸着前の状態を研究するには、非常に低い圧力(超高真空)が必要です。例えば、1気圧下では数ナノ秒で吸着が飽和してしまうため、1秒間表面状態を維持するためには約10^-9気圧の真空度が必要となります。Langmuirの名を冠した暴露量の単位「Langmuir(L)」は、10^-6 Torrの圧力で1秒間ガスにさらすことを意味し、超高真空技術の重要性を象徴しています。

超高真空装置の実際
01:13:16

実際の超高真空装置は、表面へのガス吸着を最小限に抑えるためにステンレス製であり、内部はアルミホイルで覆われて加熱されることで、壁面に付着したガスを除去します。これにより、初期真空度からさらに真空度を高めることが可能です。接合部にはガスケットが用いられ、世界共通の規格で製造されています。このような装置を用いることで、表面研究に必要な超高真空環境を実現し、数十分間は表面を清浄に保つことができるのです。

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